松例祭当日（12/31～元旦朝）の主な行事
当日はクライマックスの夜に向けて朝からさまざまな神事と行事が執り行われます。
-
早昇り
各町の若者衆が数名ずつ登山し、補屋を整え、松聖を迎える準備をする。
雪灯籠をつくる若者衆。
-
松聖 移動
松聖が小聖を伴い、参籠していた斎館から祈祷所となる補屋へ移動する。
-
お世話になった斎館の人たちに挨拶
-
小聖に先導されて斎館を後に
祭り当日の参籠所である補屋につくと若者衆に出迎えられ、それぞれの入り口に向かう。
-
-
神拝
松聖・小聖・松打・役者・ 勧進山伏・若者衆全員で補屋の神殿に向かい神拝。 その後、上町下町それぞれの若者衆は双方の松聖へ挨拶に伺う。
-
-
【綱まき行事】
若者衆によって大松明の節が切り刻まれる。大松明に登上した松聖が加持した後、刻まれた 綱は参拝者に投げ与えられる。切り綱を家の軒先に掛けると家内繁栄が約束されるという。
-
切り刻まれた大松明の節
縁起物である切り綱を奪い合う参拝者たち。綱を軒先に掛ける理由として、一説には、邪気が家に近づくと綱のように切り刻まれるから近づくなという意味もある。
その切り綱を松聖が大松明の上で加持する
切り綱をめぐる勝負は雪上相撲にて。
神拝
神事に先立ち、神を拝する。
補屋では、若者衆の頭のみが
床の上にあがることを許される。
腹ごしらえ賜杯
神事に先立ち腹ごしらえし、神酒を賜る。
ほうきの実がまぶされた丸いにぎり飯は「親玉」といわれ、関係者だけでなく一般参詣者にも振る舞われる。
まるき直し
日中、解体した大松明は、笹やヨシなどを使って元の半分くらいにまるき直される。
日が沈むと、切り刻まれて死んだ大松明は息を吹き返した。この行いは、大松明を改めてまるき直し、焼き払うためと言われている。
【綱さばき】
補屋では位上方と先途方それぞれで、４町の若者頭が引き綱の行方を競う。 引き綱とは、まるき直された大松明を焼き払う場所まで引き出す４本の綱のこと。 松明に取り付ける場所によって優劣の順位があるため、４町の若者頭は良い綱を得ようと議論を戦わす。
砂はき渡し
位上方と先途方それぞれ４町の綱延と綱付が神前に並び、大松明を焼き払うための雪穴を掘る道具「砂はき」が綱延に渡される。
砂はきを手に、雄叫びをあげる綱延と延付。
【検縄行事】
「砂はき」を手にした綱延と綱付は、庭上の松明小屋の前に行き、整列する。そして出役は大松明を焼き払う場所までの33尋を測る。
33尋とは、羽黒の領土とされた東33ヶ国になぞらえた距離。領土の外で悪鬼を焼き払う必要があるため、検縄で場所を定める。
【砂はき行事】
双方の当番町の頭と綱延・綱付が距離を確認し終わると、綱延は砂はきで大松明を焼き払うための雪穴を掘る。綱付は、相手方から砂はきを奪われないように防御する。掘り終わるとそのまま補屋へ駆け戻る。
【御定目】
「砂はき行事」が終わると、補屋の神殿で 大目付が、事前に若者頭から出されていた誓約書を、小聖と若者頭に不正をしないように読み聞かせ、確認する。
大松明引き準備
各町の若者衆は「綱さばき」で決まった自分の町の引き綱を庭上に運び出し、「験競べ」終了の合図となる五番法螺の音を待つ。
【験競べ】
一方、三神合祭殿では、位上方と先途方の 験者６人ずつ12名が東西に並び、５番目には松聖の代役である小聖が座る。
神殿に向かって１人ずつ烏の飛び上がる様を模し、神殿の前に一列に並ぶ。所司前の側に控えていた兎に扮した者は、所司前の合図に合わせて中央の二つの机の間に入る。そして祭員長から呼ばれた験者は、机の前に進み出て、机を扇子で叩く。その音に反応した兎はどちらかの机に手をのせて、位上方と先途方の優劣を示す。
この所作を２人の読師から呼ばれた験者が交互に行い、５番目の験者（小聖）の読み上げが終わると、大目付は法螺役に験競べが終えたことを告げる法螺を吹かせる（五番法螺）。６人中５番目は立春の「土用」を意味することから、「五番法螺」は冬を追い出したことを告げる合図である。
【大松明引き】（国の重要無形民俗文化財）
三神合祭殿から五番法螺の音が聞こえてくると、庭上で待機している若者衆は一斉に大松明を走って引き出し、砂はき行事で雪を掘った場所で焼き払う。そして若者衆は引き綱を担いだまま後ろを振り向かないで補屋へ走り去り、そのまま引き綱を担いで下山する。
この勝敗は、
大松明を立てる速さと
燃え具合で決まる。
【火の打替神事－国分】
新年を迎えた庭上に「鏡松明」が立てられ、大歳神の来臨を待つ。国の境を定める「検縄行事」が行われた後、丈尺棒を立てて所司前と役者が縄張り確認を行い、羽黒山伏の領土を確かめる「国分」が行われる。
庭上に立てられた鏡松明は大歳神の拠り代。「柱松明」ともいう。
写真左側にいるのは、鏡松明を管理するアホウ。
大歳神の君臨を待つ所司前と法螺役
４名の役者のうち３名は熊野権現を、１名は英彦山権現を表す。
所司前と４番目の役者が丈尺棒を押しながら領土の確認を行う。領土とは、日本66ヶ国のうち東33ヶ国が羽黒、西24ヶ国が熊野、九州９ヶ国が英彦山の領土という故事にもとづいたもの。
【火の打替神事－松明行事】
大松明を焼き払ったため、火は穢れ衰えてしまう。そこで松打によって生命力のある清浄で新しい火が切り出される。
羽黒の領土が決まると、４人の役者が鏡松明から火をもらい、松明行事を行う。
それが終わると火打ち金と火打ち石を手にした松打が、４人の役者の間に入り、鏡松明の廻りを３度回る。そして火口を携えるカド持ちのもとへ走り、火を切り出す。早く火がついた方が勝ちとなる。
【御披露】
火の打替神事終了後、松打・若者頭・大目付は三神合祭殿に行き、大目付が「大松明引き」と「火の打替神事」の結果を宮司に報告する。判定の結果、位上方が勝てば新年は豊作の歳に、先途方が勝てば豊漁の歳になると云われている。
【昇神祭】
火の打替神事終了後、カド持ちは補屋へ行き、「大松明引き」と「火の打替神事」の結果を、松聖と小聖に報告する。その後、祭員長によって昇神祭が行われた後、松聖は百日間守り続けてきた興屋聖の中の五穀を、国土に見立てた補屋の土間に撒く。
-
-
松聖は土間を背にして興屋聖に
守られていた五穀の種を撒く。
【満願証書授与式】
補屋から参集殿に移動した松聖に、100日間の冬の峰を達成した証として出羽三山神社宮司から満願証書を授与される。
【にしの寿司】
斎館において、松聖と両頭衆によって精進落としの宴が催される。
精進落しの肴の意味は次のとおり。「鰊の麹漬け」鰊は春を告げる魚。「数の子」子孫繁栄。
「ごまめ（田作り）」五万米という字をあてることから豊作。「きんびら」紅白で目出たい。
【下山】
すべての冬の峰行を終えた松聖がそれぞれの自宅へと向かう。
深い雪に埋もれた羽黒の石段を一列になって下って行く。
100日行を共にしてきた位上と先途は、自宅を前に別れる際、抱き合って達成を喜び合う。
それぞれの松聖の自宅では、そのまま直会が行われる。
【綱のし】
元旦の朝、八町の若者衆は各町の綱延の家に集まり、引き綱を家の軒先に掛ける。綱は火防となり、家内繁盛を約束するという。
【お祝い】
松聖の家ではそれぞれに親族が集まり、冬の峰満願成就を祝う会が催される。
【既習松聖会】
１/2、冬の峰行を終えた松聖２名が招かれ、「既習松聖会」でお祝いの会が開かれる。
以後、２名は既習松聖会の一員となる。同日、上町・下町でもそれぞれに反省会「聖札祝い」を開催。
４日には諸役者と若者頭の反省会を開催。
こうして羽黒山の歳夜祭は終わり、新たな１年が始まる。
-
